COMURA INC.

  • Design
  • Direction

ocota fp

Year
2023
Cliant

株式会社日進鉄工

Creative Direction

株式会社COMULA

Product Design

野口大輔(COMULA)

Web & Graphic Design

大津 厳(THROUGH)

Copy Writing

後藤麻衣子(COMULA)

Photograph

風越 信

産業用機械の部品製造を手がける日進鉄工が開発した、ベンチ一体型焚火台「ocota fp」のプロダクトデザインおよびブランドディレクションを担当しました。グラフィックデザインはTHROUGHの大津 厳氏が担当。

コンセプトは、「炎と人の、ちょうどいい距離」。ひとつの製品が人を招き、場を生み出す存在へと進化することを目指しました。

プロジェクトの起点は、日進鉄工の社員が制作した、半球状の鉄製焚火台にテーブルを組み合わせた試作品。

このテーブルは、裏面を伝って熱が足元に広がり、まるで“こたつ”のように膝下をじんわり温め、さらに焚き火の直接の熱を遮ることで顔が熱くならないという特性を持っていました。焚き火の新たな楽しみ方の可能性を見出し、この特徴に着目。「この焚き火体験を多くの人に届けるには、どんな形が良いだろう」と問いを立て、デザインの方向性を探りました。

並行して、試作品を開発したメンバーへのヒアリングを通じて見えてきたのは、大型製品の製造ノウハウを有する日進鉄工の特長と、“人が集まる場をつくりたい”という強い想いでした。

特性と想いの接点を探る中で、単なる焚火台ではなく、製品を置くだけで場をつくる「焚火場=ベンチ一体型焚火台」という新たなカテゴリーに辿り着きました。すでに市場が成熟している焚火台の領域ではなく、カテゴリーそのものを再定義するアプローチです。

核となる設計要素は、焚火台、テーブル、ベンチ。特にベンチとテーブルの距離設定が体験に大きく影響します。

遠すぎれば暖が届かず、近すぎれば安全性に支障が出る。火に近い方が焚き火体験としては豊かなため、火に近づけつつ、安全性とのバランスを取りました。試作で検証を重ね、最適距離はテーブルの縁からベンチまで400mmという結論に至りました。この距離なら、テーブルに触れずにocota内を移動でき、ベンチに浅く座ればしっかり暖かく、深く座れば熱から逃げることも可能です。

また、場をつくるには大人数が火を囲んで会話を楽しめる大きさが必要と考え、二家族程度(約10人)がゆったり囲めるサイズに、くつろげる座面奥行きを加味し、最終的に円形を六分割してベンチをレイアウトした形状に辿り着きました。設置サイズの妥当性は、既存のアウトドアファニチャーや施設併設の焚き火エリアを参考に検証しました。

足元から温まる“こたつ体験”を叶えるには、焚火台下に足を入れられる構造が不可欠です。しかし、焚火台に脚が何本もあると、座る場所によって足を入れにくい箇所が生じます。そこで採用したのが、一本脚カンチレバー構造による「吊り焚火台」。ベンチ全体をスタンド代わりとし、中央に脚を設けず、どの方向からも足を差し入れられる構造にしました。さらに、一本脚も人が座りにくいベンチの隙間に配置することで、座る全員が足を焚火台下へ入れられるように工夫しています。複数の試作と実際の火入れによる検証を重ね、変形や耐久性もクリアした上で、現在の仕様に落ち着きました。

ベンチの外周には、外気の侵入と熱の放出を抑えるカバーを装備。冷え込む夜でも内側には柔らかな暖かさが保たれます。

座面材には、屋外環境でも腐食しにくいアコヤ材を採用。材料の規格幅を活かした設計により、無駄を最小限に抑えています。また、オプションとしてクッションも用意。軽く背中を預けることができ、視覚的にもくつろぎの雰囲気が加わります。

この製品はサイズも加工工程も大型になるため、すべての部品を規格材や自社および協力工場の加工機で対応できる仕様に設計。専用金型や在庫を持たずに済む構成とし、完全受注生産を可能にしています。

 

2024年度 JIDA DESIGN MUSEUM SELECTION選定

 

公式サイト
https://ocota.jp