COMURA INC.

  • Design

AQ-30

Year
2021
ProductDesign

野口大輔(株式会社COMULA)

GraphicDesign

Yokota Norichika(CANA)

「すべての人に、きれいな水を。」というミッションを掲げるAQUAMの家庭用製水機リニューアルにあたり、筐体および操作部のデザインを担当しました。ロゴとフィルターラベルのデザインは、CANAが手がけています。

先代モデルはアメリカ仕様の大型筐体でしたが、今回のプロジェクトでは、日本の住環境に適したコンパクトサイズへの刷新と、ビルトイン対応も視野に入れたリニューアルが目的でした。そのため、まずは内部構造の再構成から着手し、性能を維持しつつ、空間効率の高い基本レイアウトを構築していきました。

基本レイアウトの方向性が見えてきた段階で、外観デザインの検討も開始しました。飲料水を扱う製品としての清潔感、特徴の似た先行カテゴリーのウォーターサーバーとは異なる造形表現、ブランド価値を体現する佇まいをデザインする上での手がかりとし、機能と意味の双方において、AQUAMの理念をかたちにしていきました。

大きく改良したのは、空気から抽出した水が貯まる「集水部」です。この製品の存在意義を象徴するパーツと捉え、従来の背面から正面へと配置を変更。これまで箱型だったボリュームを、ボトル形状へと一新することで、視覚的な象徴性と使い勝手やメンテナンス性の両立を図りました。

水が出てくる吐水部は、使用するたびに目に入り、手に触れるため、使用感や製品の印象に大きく影響します。機能的には、ボタンを押しやすく温冷を間違えないようにすること、注ぐ位置を明確にしてミスを防ぐことを重視しました。デザイン面でも製品の特徴を際立たせる部分であり、「空気から水が生まれる」ような印象を目指しました。水栓は通常床から配管されますが、今回は空から水が降るような印象を目指し、上から管が伸びてくる形状を採用しました。筐体と接続するアームにはクロムメッキを施し、筐体が映り込むことでアームが視覚的に消失し、空から水が出てくる印象をさらに強めています。吐水部上部には温度や湿度など空気のコンディションを表示する液晶を搭載。表示部のフォントも専用に設計し、統一された世界観を築いています。

筐体前面は折れた形状とすることで陰影が生まれ、圧迫感を軽減するとともに、ビルトイン設置時に吐水部や受け皿が突出しないよう配慮しました。全面には曲げ加工を施したアクリルを採用し、シグネチャーモデルにはAQUAMのブランドカラーであるブルーを裏から印刷することで、空気や水の透明感を表現しています。さらにこのパネルは、平板を曲げただけの構造で、ステンレスや木材など他素材への変更も容易で、空間や用途に応じた印象に変えることが可能です。

受け皿は、水がこぼれた際に全体で受け止める構造とし、大きな曲面で構成することで拭き取りやすさにも配慮しました。
筐体下部の扉を開けると、空気を取り込むフィルター、集水ボトル、4種のフィルターが並び、空気から水を生成・貯蔵する一連の工程を視覚的に確認できる構成となっています。

水を「つくる」プロダクトとしての機能性と、日常に溶け込む佇まいの両立を目指したデザインです。